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第六の絶滅

Die Wahrheit ist irgendwo da draußen.

自転車泥棒(1948年・イタリア)

第二次大戦後の混乱期のイタリア。

妻と6歳の子を持つアントニオ・リッチはもう二年も仕事にありつけていないが、遂に職安でポスター貼りの仕事を得る。

仕事に必要な自転車は生活の為に質に出してしまっていた為、妻のマリアが嫁入り道具の毛布を質に出しなんとかこれを取り戻す。

「これで生活が楽になる」と意気揚々と初仕事に臨むアントニオだが、仕事中に大切な自転車を盗まれてしまう。

自転車がなければ仕事を続けることはできない。

息子のブルーノを連れ、アントニオは泥棒と自転車を探してローマの街を駆け回る……。

 

 

導入のあらすじは上の通り。

自転車を盗まれた経験のある人は少なくないだろう。

自分もつい最近駅に駐輪していた自転車を盗まれた。(これはなんとか戻ってきたが)

本作はネオ・レアリスモの代表作だとか世界的に評価されているクラシック映画の一つのようだが、感心させられたのは何よりこの「自転車を盗まれた時の絶望感」が完全にスクリーンに投影されている点だ。

妻マリアが「なくても寝られるわ」と言い布団を質に出してまで取り戻した自転車を、僅か一日でまた失ってしまったというアントニオの失意と絶望がこれでもかと訴えかけてくる。

裕福な時代に生きる我々とは違い、自転車は簡単に買えるようなものではないし、何よりアントニオにはせっかく得た仕事を続けられるかどうか、家族の生活がかかっているのだから、その絶望は比べようもないものだ。

自転車は取り戻せるのだろうという期待を煽る伏線が数々張られていくのだが、これもまたことごとく裏切られる。

たとえば……

  • 息子ブルーノが自転車を磨いている時に見つけた目新しいクランクの傷(これを頼りに盗まれた自転車を見つけるのかな?)
  • 妻がアントニオの仕事が見つかるよう占ってもらっていた怪しげな占い師(アントニオはインチキと馬鹿にしていた)

……というような思わせぶりな伏線はいくつもあるが、結論から言えばこれらは何の役にも立たない。

経験のある人ならわかるだろうが、盗まれた自転車は大抵の場合において返っては来ないものだ。

そして追い詰められたアントニオは最後の最後に衝撃的な行動を採ってしまう……。

  

この映画に描かれているのは1948年という時代だけでなく、世の中は不公平で、理不尽で、不条理で、どうにもならないことだらけだという、どの時代に生きる人も感じるであろう普遍的な現実だ。

自転車を盗まれたことのある人にもそうでない人にも是非観てもらいたい一本。

 


 

かなり丁寧なリストアが行われており、70年前のフィルムとは思えないほど鮮明な映像なので是非Blu-rayをおすすめする。

 

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