第六の絶滅

Die Wahrheit ist irgendwo da draußen.

冴えない彼女の育てかた♭ #7 加藤恵と携帯電話

 2016年も2017年もアニメ全部観てるけどまとめを書くのが全然追いついていない。なので『冴えカノ♭』の携帯電話を使った演出が超すごいことについて書く。

 

■ #7 「リベンジまみれの新企画」 絵コンテ:亀井幹太、演出:板庇迪

 SSE*1の体調を気遣いゲームの発売延期を決定した倫也に、蚊帳の外に置かれた加藤恵は怒り、倫也はガン無視される。SSE・霞ヶ丘詩羽ら他のサークルメンバーとはうまく行っているようでどこか噛み合わない。ある日の下校中、喫茶店の窓に加藤の姿を見つけた倫也は、意を決してメールを送る……という場面。

 

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茶店の窓に加藤の姿を見つけた倫也。喫茶店前の道路を2台の車がすれ違う。

 

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立ち止まり、加藤の姿を見て考える倫也。また2台の車がすれ違う。

 

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加藤の横顔。窓には右から左へ走る車が映っている。

 

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何かを決意し携帯電話を取り出す倫也。

 

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携帯電話に何か通知が来たことに気付く加藤。逡巡、少し躊躇いがちに画面をタップする。

 

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目を細める加藤。

 

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「ちゃんと読んでくれた」と手応えを感じ、その場を去る倫也。車が1台、左から右へ走って行く。

 言うまでもないが、喫茶店前の道路を走っている車は倫也と加藤のコミュニケーションのメタファーだ。2台の車が行き交うのを2回繰り返すのは「すれ違い」そのものだし、その後で加藤から倫也の方向へ走る車が1台だけ走ってくるのは、加藤の方が倫也に対して誠実に「自分もサークルの仲間だから蚊帳の外には置かないでほしい」という思いを伝えていたことを示している。倫也がちゃんと向き合おうと決意した上で加藤にメールを送ることでようやく倫也から加藤の方へ車が1台やって来て、車の台数は均衡する。

 ここの演出も結構好きなんだけど、問題はこの後。

 

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あくまでサークルの連絡の体で来ている倫也からのメールを見て思いに耽る加藤。

 

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操作せずに見つめていた携帯電話の画面が省電力に入って暗転、すぐに画面をタップする加藤。

 

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また画面を見つめる。

 

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静寂、誰もいない店内。

 

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また携帯電話の画面をタップする加藤の姿が映って、画面自体が暗転。

 

 すごい!!!!!

 喧嘩した相手からの「二人で会おう」というメールを見て思い悩んでいる人間の感情を、机に置いた携帯電話をただ見つめ、その画面が省電力的なやつで暗転してしまうのでその度にタップする動作を繰り返すことで、一切の台詞もなく最小限の動作でこの上なく饒舌に語るというこの演出!!!!! スマートフォンという現代の携帯電話をこれだけ活かした表現をおれはアニメで観たことがない!!!!! 次のノーベルアニメ携帯電話賞は確実と言えよう。『ほしのこえ』から15年、これが2017年のアニメや……。

 最近はアニメにも普通にLINE(のようなメッセージアプリ)で連絡を取り合う様子が出て来るけど、この場面に関しては気楽なLINEではなくあくまでサークルの事務的な連絡だからメールですよという体になって、より効果的だ。*2

加藤恵は他のキャラクターに比べて台詞が少なく抑揚もあまりないキャラクターなので、こういう画面で語る演出がすごい効いてくる。*3茶店内のカット割りも絶妙で、加藤が一人きりで思いに耽っている雰囲気が抜群。

 パソコン通信、ブロードバンド以後のインターネットや、ガラケー時代の携帯電話を効果的に使ったアニメは色々あるが、スマートフォン時代にスマートフォンでなければならない決定的な演出、そのエポックメイキングはこれだと言えるものを見せてもらった実感がある。この感動を忘れぬよう日記にかいておこう……。

 

↓動画

 

 それでは皆さん、今後も張り切ってアニメ全部観ていきましょう。

 

 

 

 

*1:澤村・スペンサー・英梨々

*2:冴えカノでLINEが出て来たかどうかは覚えていないけど

*3:今シリーズだと #5 の倫也と加藤の会話で道路の車線を使った演出とか顕著