アニメ全部観た2014
再放送や旧作を除く2014年内放送開始のTVシリーズを全部観た。
せっかくなのでそれらのTVシリーズ、および公開された劇場作品の中から特に良かった10本と、その他の印象深かったものについての雑感を以下にまとめた。言うまでもないが定量性は全くない。
2014年アニメ10選
劇場版 Wake Up, Girls! 七人のアイドル
明らかにリソース足りてねえとかインターネットやめろとかアウトロで完全に台無しとか色々あるが、アイドルですらない存在が如何にアイドルとしてのスタートラインに立つか、というのをかなり悪趣味な演出を用いて表現したところに惹かれるものがあった。山本寛監督の特徴が出過ぎるくらいに出過ぎた画面は、やはりハルヒの演出で衝撃を受けた世代としては良いな~と思わされる。
TVシリーズがあんまりにあんまりだったので、公開が予定されている続編劇場版では集大成と言えるものを見せてほしい。
少年ハリウッド -HOLLY STAGE FOR 49-
アイドルを主役に据えたアニメが隆盛をきわめる中で現れたダークホース。完全に流行りを無視した濃すぎるキャラデがかなり視聴者を振るいにかけている観はあるが、本編を観ればこのキャラデでなければならなかったのだと納得できる。これもまた「アイドルになるということ」を丹念かつ真摯に描いた作品であり、まるでミュージカルのような #7 「人生に人生はかけられない」や、架空の歌番組を丸々30分使って作り出した #10 「ときめきミュージックルーム」などの斬新な構成が光る。
部分的に例外はあれ、キャラクター個人の人格がそのままアイドル性を帯びてアイドルとして認められるという構造の多い中で、アイドルというキャラクターを演じること、そしてファンが一体となってその概念と世界観を共有していくことを、作品全体をもって表現しようとしているのは非常に挑戦的であり、かなり上のレイヤーで勝負している野心的な作品だろう。
現在放送中の第2シリーズでは更に踏み込んだことをやっていて、一体どういう形で結末を迎えるのか楽しみだ。
Hi☆sCoool!セハガール
セガが悪いインターネットに毒されてゲハネタ自虐ネタだらけのアニメを作ってしまったのかと絶望しかけたが、そんなことは一切なく、自社のプロダクトに対する誇りが感じられる大変真摯で誠実な作品だった。デフォルメ頭身のモデルは新規造形でかなりかわいく、決して安っぽくない。何気にフルHD制作で2014年全体を通してかなり高画質な部類に入るのも高評価。
サターンちゃんのねんどろいど出してくれ~
ハイキュー!!
節穴の目でもわかる作画の良さが物語の面白さと臨場感をしっかりと引き立てていて、原作の持つポテンシャルを十二分に引き出している。特にエース・旭の再起という原作でも序盤の山場 #9 「エースへのトス」が白眉の出来。挫折した旭がモップを踏み折る1カット! 最高!
ばらかもん
話としては「田舎で成長」というありきたりなものではあるが、生き生きと描かれた島の情景や人びとの暮らしが半田の成長に繋がっていく説得力を持っていた。作画も抜群に良く、特に筆と墨の躍動感が最高。かなり難しいところがある劇中の絵画や美術作品の表現において、完成品だけでなく「書く」というその行為にフォーカスしているのはやはり作画の力だろう。
そにアニ -SUPER SONICO THE ANIMATION-
突如として現れたアニメ界のマルホランド・ドライブ。
まるで愛玩のためだけに生み出されたようなキャラクター「すーぱーそに子」の毒にも薬にもならない日常をなかなかの作画で活写した、いわゆる“日常系”作品だが、あまりにも、あまりにも男のセックス願望を高い純度で結晶化しすぎている「すーぱーそに子」というキャラクターにそれをさせることで、得体の知れない不安感と猟奇性を持った怪作に仕上がっている*1。いつ彼女がレイプされ山中に埋められるようなシーンが来てもおかしくない、全12回に気を抜ける瞬間は全く存在せず、常に全身がざわついて仕方がなかった。一体なんなんだ、このアニメは。
というような話は別にして、すーぱーそに子が一人旅をする #7 「スターレイン」は、独りでいる心細さや寂しさがなんとなく影を落としていた旅路が最後に満天の星空の輝きで締めくくられるという大変美しいロードムービーの傑作だ。
魔法戦争
十年に一度の災厄。
真剣に観ていた筈なのに「えっ?」となってしまう、場面の繋がりがまるで理解できない思い切りすぎの構成で終始混乱させられる。さらにシュールすぎて笑えてしまう絵面、主人公の実家の上空で魔法戦争が始まってしまった時はもう楽しくてたまらなかった。
極めつけに最近なかなか見ない投げっぱなしな終わり方で呆然とする中で制作氏のこの発言が出たことで魔法戦争は完成した。
魔法戦争が分割2クールだとか言われてますが、今日で終わりです! 斬新な最終回でしょw
— 三浦 慧 (@cometarou_m) 2014, 3月 27
何も言うまい。
石浜真史さんのコンテ・演出・一人原画のEDは無茶苦茶かっこいい。
マケン姫っ!通
1クールに1本くらいあると安心するおバカなドッキリスケベアニメ。もはや別の生物にしか見えない蠢く乳はともかく、全体的に決まったアクション作画でカラッとした爽快感のある作品だった。特に初代マケンキ誕生を描いた最終回 #10 「そして、マケンキへ」は抜群の作画を見せてくれる。それまでのおバカな雰囲気とは打って変わって妙にしっとりした空気で締めくくり、なんか……なんか良かった気がする……という気持ちになれたのも好印象。
毎週桜Trickで失われた人間性を取り戻してくれたことにも感謝したい。
蟲師 続章
「原作をそのままアニメにする」というある種の理想を完璧に実現した、その方面では間違いなく最高峰の作品。前シリーズから10年近く経っての続編シリーズの本作では、遂に脚本がクレジットから消滅し、まず原作漫画を文字起こしするという作業を行っているらしい。
ここまでやると逆に遊びがなさすぎる気がしなくもないが、その点は音響が映像ならではの面白さを見せてくれている。#20 「常の樹」で御神木が切り倒された時のパチパチメキメキという音とか、こんなに魂が込められた音が聞けるTVシリーズもなかなかないだろう。2回落としたのもどうやら音響関係の作業の遅れだった模様。
今年中に公開が予定されている劇場版も楽しみだ。
ヤマノススメ セカンドシーズン
前作の3倍の枠時間、そして2クールで実質6倍になってヤマノススメが帰ってきた! ありがとうTポイントカード!
精緻なレイアウト、生活感ある丁寧な美術、作画の良さが、良いだけで終わることなくキャラクターたちの生活感を演出し、きわめて高い存在性を与えることに成功したハイレベルな「日常系」と言えよう。ヤマノススメ最高~✌( 'ω' )✌
色とりどりに記号化されたアイテムやキャラクターが上に下に右に左にとアイディア満載に動き回った末に、それらがあおいとひなたのジャングルジムに収束し、最後のワンコールで四人のキャラクターの個性までも描ききって完結する『夏色プレゼント』の前期OPはもう「センスが良すぎる」以外に言いようがない*2。ハイテンポでポップな曲調に合わせて気持ちよく展開する『Tinkling Smile』の前期ED、後期OP/EDもとにかく良い……ヤマノススメ最高……。
OP/EDにとどまらず本編にもアニメの楽しさがたくさん詰まっていて、 #17 「高いところって、平気?」での江畑諒真さんの一人原画を筆頭に作画的な見どころも充実。ショートアニメという形態を存分に活かし勝負している最高の作品だ。もう感謝しかない。でもポルノ抱き枕カバーだけは本当に勘弁してほしい。
ヤマノススメの良さの一端については以下の記事で詳しく書いた。
その他
ウィザード・バリスターズ 弁魔士セシル
「世の中の怪奇事件は法律と魔術が解決する」と言っているわりに怪奇事件の解決に法律が機能する回が一個もなかった気がする。良くも悪くも「これぞ梅津アニメ!」という感じ。#8 「クリストファー・チャーム」のエフェクト作画がすごい良かった。
金色のコルダ Blue♪Sky
おれが信長の野望に支払った数万円で製作されたアニメ。
眠すぎる前半から一転、後半ではオーケストラのコンクールなのにトーナメント制を採用している謎すぎる大会システムに端を発し、演奏前の対戦相手に精神攻撃を加えて勝利を得ようとするなど、音楽が題材とは思えないエキセントリックなシナリオ展開に魅了された。「ダサい」としか形容できないOP主題歌も癖になる。
桜Trick
精霊使いの剣舞
木戸衣吹。
ノーゲーム・ノーライフ
色彩がきつすぎて失明しかけた。
スペース☆ダンディ
著名スタッフが集まったお祭りアニメ。本当に貴重な高山文彦参加作品*3でもある。#10 の旋盤、#13 の走るQTなど印象に残る作画が多い。
ハマトラ
第二期最終話を「このタフさが横浜という街の強さなのかもしれない」という強烈なおもしろ名台詞を繰り出して締めくくり、伝説になる。
Fate/stay night [Unlimited Blade Works]
時間を贅沢に使いすぎてかなりダルいことになっているのはさておき、衛宮士郎くんが十数年の歳月を経て遂に冬服を設定され、二月の寒空をあのお母さんが近所のスーパーの衣料品コーナーで買ってきたようなダサいトレーナー一枚で過ごさずに済んだ*4、その事実だけでかなり感慨深いものがあった。
ブレイドアンドソウル
たまによくわからないオンラインゲームを大作アニメ化するGONZOが2014年に繰り出すよくわからないMMORPG原作のアニメ。原作ゲームはサービス開始から一ヶ月を待たずに葬式状態になっていて、大丈夫なのかこれという雰囲気が漂っていたが、ちょくちょく冴えたアクション作画を見せてくれて嬉しさがあった。がんばれGONZO。
魔法科高校の劣等生
未確認で進行形
コミカルな動きでキャラクターを見せる作画が全体的に良かった。その一方でリアルにうまそうな #3 のお菓子作りのような最高の作画もあって、わかるか、アニメで食べ物を見せるっていうのはこういうことなんだぞ、と言いたくなる。どこかに。
結城友奈は勇者である
#7 で箸の使い方にフォーカスしてキャラクターの育ちの良さを対比していたのがとても良かった。アニメキャラも食事の作法、鉛筆の持ち方ひとつに育ちが出る時代である。
いなり、こんこん、恋いろは。
桑島法子さん!
異能バトルは日常系のなかで
#7 の早見沙織さん渾身の長台詞が全部持って行った。これ一発録りだそうで、凄い。
俺、ツインテールになります。
ED主題歌『ツインテール・ドリーマー!』が名曲。
天体のメソッド
2014年になって久弥アニメと向き合うという色々な意味でつらい状況ではあったが、やはり久弥脚本の一歩引いたドライな感覚はウェットすぎてカビが生えそうな麻枝脚本よりも好きだな、という再発見があったり、演出もそういう方向で良くコントロールされていたり、江畑諒真さんの一人原画EDなどの見どころもあったり、ED主題歌「星屑のインターリュード」が2014年とは思えないレベルで圧倒的に「鍵」を体現していたり、終わってみれば結構楽しめる作品だった。
宣伝では大々的に舞台としてフィーチャーされていたわりに洞爺湖と札幌というロケーションを全然活かせていない劇中描写に不満は残るも、洞爺湖町在住の友人によると天体のメソッド目当ての観光客もまあまあ来ていたとのことなので、まあいいか……。
しかし久弥アニメとの対話を乗り越えたと思ったら別の新たなる麻枝アニメの製作が発表され、2015年も過去と向き合っていかなければならないようである。
楽園追放 -Expelled from Paradise-
「身体動かして音楽聴いてうまいもの食って生きるのは最高」という完全に使い古されたヒッピーの説教で「楽園追放」が成し遂げられることとか、正直シナリオは2014年にこれかよという感じだったが、とにかくカメラを動かすのを我慢できないアクションの多いフル3DCG作品の中にあって、カメラを抑制した見せ方を徹底していたのが素晴らしい。アンジェラのCGモデルもかわいかったし。
ただ冒頭で乳首を出す必要は全くなかった。台無しでは?
金田一少年の事件簿R
人間関係の絡み合いや舞台背景など、金田一少年の横溝正史的な暗い雰囲気を作り上げていた要素がどんどん適当になっている比較的最近の原作漫画のエピソードが中心で期待値は低かったが、高遠遙一が原作にないオリジナルポエムを携えて登場したり、シリーズファンには楽しい作品ではあった。しかしよりにもよって屈指の迷エピソード「ゲームの館殺人事件」でシリーズを締めくくったのは何だったのか……。しかもこのエピソード、同クールに放送された実写ドラマでも使われていた。原作者のお気に入りなのか……?
まとめ
版権、オリジナル共に充実した一年だった。ただ、作品本数も2006年頃を彷彿とさせる多さで、各作品の把握や録画の調整にも難儀した。21世紀に入ってたったの数年で深夜アニメが爆発的に増加し、週に40本とか50本とか放送されるというのは本当に異常な時代と言わざるを得ない。アニメはどこへ向かうのだろうか。
最も印象に残った作品はやはり『ヤマノススメ』。これだけ何度も何度も同じ作品を観続けたのも久しぶりだ。『ヤマノススメ』には自分がアニメに求めるものが全部詰まっていたように思う。ありがとうヤマノススメ。
他に目立った作品では著名スタッフ大集合のお祭り作品『スペース☆ダンディ』から、富野由悠季最新作『Gのレコンギスタ』*5、ほぼ10年越しの『蟲師 続章』など、ビッグネームの新作や、旧作の続編シリーズが続々と出て来て、なんとなく20代後半~30代前半あたりの世代がターゲットにされているような感覚もあった。
視聴スケジュール的には2013年秋に一ヶ月くらいアニメ観るのをサボったために生じたズレが響き、これを修正するのに結局一年三ヶ月ほどかかってしまった。録画を溜め込むと後から毎日16時間アニメを観続けるといった、かなり非人間的な生活を送らなければならなくなるので、2015年はなるべく録画した翌日に観ることを心がけていきたい。
一年間TVアニメを全部観るのは無論大変ではあるが、「漫画全部読む」とか「小説全部読む」とか「映画全部観る」などがほぼ不可能なのに比べれば十分に達成可能な目標*6であり、スケジュール管理さえしっかりしていれば非人間的な生活をせずとも大丈夫なので、特に主語を大きくしてジャンルを語りたい人などには是非アニメ全部観るのをおすすめしたい。
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