三毛別羆事件の羆とされている写真について
幾原邦彦監督の2015年最新作『ユリ熊嵐』が「『羆嵐』と関係あるんじゃないか?」ということで話題を呼んだり呼ばなかったりしているようだ。
hoooooooly SHIT pic.twitter.com/uCLLd1cWFC
— Mad P. (@pancakeparadox) 2015, 1月 5
一応捕捉すると『羆嵐』というのは大正四年に北海道で起きた日本史上最大の獣害事件・三毛別羆事件を題材にした吉村昭の記録小説。
まあ羆嵐とアニメとの関係についてはこの際どうでもいいのだが、この巨大な熊っぽい生きものの写真、かなり前からネット上では「三毛別事件の羆」ということで出回っている。
軽く検索したところではこれくらいあった。
【史上最大の獣害事件】 三毛別羆事件 アンビリーバボー | 【厳選】 怪談・都市伝説・怖い話まとめ
どうやら2011年8月18日放送の『奇跡体験!アンビリバボー』で三毛別事件が取り上げられ再現ドラマも流れたようで、その頃からブログや2chで話題になることが増えた模様。
2chでは「流石にでかすぎるから違う写真だろ」などの突っ込みも見受けられたが、まとめブログではそのレスが掲載されていなかったりして、伝言ゲーム状態で「三毛別の羆」としてこの写真が広まっていったようだ。
中でも一番上のNAVERまとめの記事がかなり閲覧数が多く、「三毛別 羆」「三毛別羆事件」などで画像検索すると、この写真がトップに出て来るようになっている。
「三毛別羆事件で実際に仕留めた後の羆」とまでキャプションに書かれているのでどうしようもない。
しかしこれ、「体調(ママ)2.7m 重さ340kg」と書かれているが、どこをどう見たってこの写真の熊は2.7m 340kgで済むような大きさではない。
それに三毛別事件は真冬の12月に苫前で起きた事件で「吹雪のせいで羆を見失った」などの証言もあるが、写真には1mmたりとも雪は積もっていない。
さらに横に立っている人間、これ日本人じゃないだろ……。
実際のサイズ感はこれくらい。
三毛別羆事件復元跡地 - 留萌開発建設部
で、そもそも三毛別の羆の写真というのは存在しないだろう。
三毛別羆事件に関する著名な資料としては吉村昭の記録小説『羆嵐』と木村盛武のドキュメンタリー『慟哭の谷』があるが、このどちらにもそういった写真は掲載されていない。
もし存在するならこうした本や三毛別羆事件復元跡地などでも取り上げられる筈だ。
まあそういうわけでネットで拾った巨大な熊の写真を「三毛別の羆だ~」と広めてしまうのはやめてほしいな~という話だったのだけれど、なんかもう手遅れな雰囲気もあるし、わかる人だけわかってればいいかなとも思う。
それと先ほど挙げた『羆嵐』『慟哭の谷』はどちらも名著なので是非ご一読を。